青木マリduo+(ゲスト:柴田奈穂)2016.2.26

2016年1月20日水曜日

映画「トゥーマスト」やっと観てこれました



パソコンの不調で書くのが遅くなってしまいましたが、、。自分が忘れないためのメモです。

先週、渋谷uplinkにて、『トゥーマスト ~ギターとカラシニコフの狭間で~』を見逃した映画特集での再上映で観てきました。

昨年春の上映はすごく観たかったのですが、上映時間があわず、残念な思いで見逃してしまっていたので、「今度こそ絶対に見逃すまい!」の気合で見に行ってきました。

どんな映画かというと。

タイトルの「トゥーマスト(toumast)」はサハラ砂漠の遊牧民、トゥアレグ族出身のバンドの名前で、「アイデンティティー」を意味するタマシェク語。 
元レジスタンス兵士のムーサを中心として、パリを拠点にヨーロッパなどで活動している。
その、ムーサへのインタビューを軸に、サハラ砂漠の風景、トゥアレグ族の生活や音楽でつづられているけれど、話の内容は、民族差別や、虐殺、独裁に抵抗する人々の姿に迫るドキュメンタリー映画でした。

私たちの住む世界を反対側から描き出している、と思いました。
テロリスト、と呼ばれる、理不尽な暴力に暴力で抵抗してきた人々の声。
大きな資本と、虐げられる小さな人びと。原子力の問題も、、。

遊牧生活でそもそもの国籍も無く、存在もあまり知られていなかったトゥアレグ族の人びとは、植民地政策、砂漠からウランなどの資源が出たことで土地を追われた。

生活基盤を失って困窮する若者たちはリビアのカダフィの元で兵士となった。そこで、軍事訓練を受け、ギターと出会ったムーサ。

音楽を通じて抵抗のメッセージを届けはじめるが、やがて政府から音楽も禁止され、襲撃されて半死の目にも遭っている。当時のバンドメンバーもほとんど殺されてしまったと、メンバーの写真を宝物にしている。

インタビューに答えるムーサのシニカルな口調、眼差しが、どれほどの経験をしてきたのか物語ってる。
外側の人間が取材して描いたものではなく、その中で生まれ育って外に出た人物の言葉はリアルであり、とても冷静であり、透明で迷いがない。

世界の反対がわで、行われていること。理不尽、暴力。

それに対してムーサ逹の言葉。


「大地は我々のものではない、我々が大地のものなのだ。」
「自分たちは、ただ、サハラ砂漠で遊牧民として暮らしたいだけだ。」


「自分たちには武器を持つしか抵抗の手段がなかった。でも、それでは世界にはなにも伝わらない。「反政府組織」で片づけられ、報道もない。
だからもう銃は使わない。音楽で闘う。メッセージを届けるんだ。」

ミュージシャンは政治的な発言をするな、とか、たまに耳にしますが、そんなのちゃんちゃらおかしい。
暮らしのなかの大事なことを歌にして伝えるのは、大昔から人たちが紡いできたこと。
物語だってそうだよね。歌ってもともとそういうものなんじゃないだろうか。

「歌う、は訴ふるなり」 とは、折口信夫の言だったか、、。

音楽は音楽として純化されていてもそれはもちろん構わないんだけど、そうじゃなきゃダメ、とかいうのはおかしいよね。王侯貴族のお抱え楽師じゃあるまいし。
「自分たちの音楽」は、生々しくてもいいんじゃないだろうか。

作品中にはサントラとして、トゥーマストの音源が使われていて、また現地の伝統的音楽のシーンもふんだんにあり、その面ではミュージシャンとして、とても興味深く鑑賞しました。

基本は手拍子、感じるのは八分の六拍子と二拍三連、どっぷりはまって、内容の深刻さとは裏腹に体はずっと心地良いビートに乗り続けてしまう。私はアフリカ人ではないけれど、人類きっとどっかでつながってると確信する、安心と懐かしささえ感じるビート。
ようするに、歩くリズムに、心臓の鼓動が乗っかってるリズムなんだよね、たぶん。

トゥアレグ族のリズムは4拍子ばかりではなく、7拍だったり9拍だったり。
で、そのビートも彼らの、アイデンティティー。

音楽や暮らしのなかでの女性の役割、対等性についても触れられていたけど、男女一緒に作る音楽だから、より一層身体に深く染みるのかもしれない。

でも、それって、一人のスターや、アイドルを必要としない性質のものだよね、、。

考えるところがたくさんありました。

ムーサは、フランスでの音楽活動、レコーディングの苦労などについても語っていて、それは純粋に共感できるものでした。
「メトロノームを初めてつかったんだけど、、。俺にはカチカチ、としか聴こえなくて、なかなかうまくいかなかった。」とか、「わかるわ~!!」と叫びたくなりました(笑)
実は私も、前作「Habibi」で初めてクリック(メトロノーム)を使って録音したんだけど、機械的なクリック音の中にビートを見つけ出すのに大変苦労して、というか、録音、ミックス担当の小林洋に大変な苦労をかけてしまって、、(笑)今は大ぶん慣れましたけどね、、。

バンドのサウンドについては、「トゥアレグの音楽とは少し違う。トランスだという事がわかったんだ。」と。
これは、CDなどの音源で確認できますね。2010年の映画なので、その後の音楽が気になるなあ。
レベル・ミュージックはなかなか日本では紹介されないっぽいけど、
日本にツアーに来たらLIVEに是非行ってみたい。

とまあ、そんなこんなで、いくら書いてもネタバレにはなりえないタイプの映画です。

ライブと同様、体験するしかない。
興味のある方、あと数回は上映するようなので、タイミング合えば足を運んでみることをオススメします。

info http://www.uplink.co.jp/movie/2015/41942


次回のLIVEは1月30日(土)高円寺稲生座
  青木マリduo+/トランジスタラジオ(from飯田)よろしくです!


















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